剣術指導記

剣術指導の覚書(2)2020年12月26日

2020年12月27日

2020年12月26日:神奈川

神奈川で2020年最後の稽古。

2020年はあらゆる大会が中止になり、稽古も数か月休止せざるを得なくなりました。小中学校の体育館等を使っていた他の武道流派の中には、まだ再開できていないところもあるようです。

しかし剣術(ひいてはすべての武道は)、「ひとり太刀をとって」行うもの、つまり一人で稽古し高めていくものであると思います。人が交わっての稽古がやりにくい今こそ、一人ひとりの修業者が一人稽古を工夫し、極めるいい機会なのかもしれません。

初心者への基本の指導

この日は、約1年前に入会した初心者の方1人を指導。

剣道経験者であるため、まだまだ剣道の癖が出るが、徐々に動きが変わってきました。

初心者の指導の時は、繰り返し繰り返し動きを指摘して修正していく作業を重ねますが、この時、人によって伝わる言葉が違います。ある人に通じる言い方が、ある人には通じにくいということがよくあり、人はそれぞれ言葉と身体感覚が個性的な形で結びついているのだろうと思います。

この日は正面切り、袈裟切り、受流といった基本的な技を繰り返し鍛練しましたが、初心者は上体の動きと足の動きや位置がうまく連動して動かず、動き全体としてバラバラになってしまう傾向があるとあらためて感じました。

「一重身」についての指導

当流の動きで言うと、「一重身」という姿勢を取ることによって全身の力の方向を一致させ、後ろの足から地面を押す力、全身の体重、上体の力がすべて剣先に乗るようにすることが重要になります。この姿勢を作ることで、生の腕力に頼らずとも重い、斬撃力のある斬りが可能になります。

この姿勢を作るためには、どの身体の部位がどの位置にあり、どういう形でキープするのか意識できるようになる必要がありますが、最初は普段意識したことのない部位を意識しなければならないため、正しい姿勢が取れない、正しい動きができないということになります。

繰り返し鍛練すれば、少しずつ意識したことのない部位が意識できるようになり、できなかった動きができるようになり、質の高い技が身に付き、無意識にそういう姿勢を取れるようになるのですが。すぐにできるようにはならないため、根気強く指摘し続け、鍛練を繰り返してもらう必要があります。

今回の発見

指導しながら自分も動きを確認する中で、以前よりも一重身の形、特に足裏から膝、腰までのラインが綺麗に入り、より良い動きができるようになってきているのではないか、という感覚がありました。

さらに言えば、この足の感覚は体側を通って腕、剣先までつながるものだろうと思います。この感覚があると、片手で一刀を持って振るという、一見両手持ちより弱く見える斬りでさえも、足を含む全身運動として行うことができ、大きな斬撃力を生めるのではないかと感じました。

極めて主観的な感覚ですが、とにかく足裏から膝、腰に通じるラインが「決まる」ことが、強い斬りを生む上で重要であり、それは基本的な鍛練を繰り返すことでしか身に付かないのだろうと思います。

新規入会者への指導は、継承という意味でも大きな意義がありますが、自分の動きの再検討としても非常に大きな意義があると改めて感じました。

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