武道・武術体験記

菊野先生の道場での稽古(1)

11月から、格闘家で武術家の菊野先生の道場に通うようになりました。

菊野先生の道場では「秀徹空手」「沖縄拳法」「システマ」の指導がされており、私は特に秀徹と沖縄拳法を学んでいます。まだ数回しか通ってませんが、私が修業してきた剣術とも共通する部分があり、両方を修業していくことでもっと強くなれると感じています。

1章:秀徹の練習から得られるもの

秀徹は、藤原先生という空手家の先生から菊野先生が学び、菊野先生の会でも指導されている空手です。ポイントは仙骨を中心とした姿勢作りであり、あるポイントを注意して姿勢を作り、全身に繋がりを作ることで、筋力に頼らずとも強い攻撃ができるようになる、というのが骨子だと理解しています。

実際、菊野先生の中段突き、前蹴り、ローキックをミット越しに受けましたが、非常に重く、堅い感触の打撃でした。それも手足は軽く動かしているようにしか見えないような打撃で、「手打ち」のようにも見えるフォームなのにも関わらず。

軽い突き一発だけで後ろに飛ばされましたし、前蹴りでは何歩も飛ばされ、後で他の方に受け止めてもらわなければ壁まで飛ばされたかもしれません。

軽く打ってもこれほど強い打撃が打てるのだから、やはりそこには独特の理合があるのでしょう。

実際の稽古では、地味な鍛練をずっと続けていくのですが、この鍛練によって手足に身体の重みを乗せられるようになったら、剣術の技の重さもずっと変わってくるのではないかと思います。

私の剣術の師匠である宮田先生の斬りや受けは、非常に重いです。特に十字受けで押し込まれたとき、どれだけ耐えようとしても崩され、下がってしまいます。剣術の鍛練を通じても、強力な攻撃や受けが可能になるのだとは思いますが、秀徹の鍛練でも同じように技の質を上げられるのだと感じました。

2章:沖縄拳法の練習から得られるもの

沖縄拳法もまだ触りを知った程度ですが、剣術との共通点を見つけました。

2-1:拳にリードされるという動き

私が修業してきた二天一流の剣術では、刀の重みを活用して斬撃や身体の移動を生み出していきます。たとえば「喝咄」という鍛練(技)では、膝の力を抜いて身体が沈み込み、その反動で刀が振りあがり、今度は振りあがって前方に向かう刀の重みに引っ張られるように身体が移動していきます。

身体が中心にあり、筋力で刀を振り回すのではなく、逆に刀によって身体が引っ張られるように動く、という点にポイントがあり、このように動くことで強い攻撃が可能になります(もちろん他にもいろいろなポイントがあるのですが)。

それと近いのですが、沖縄拳法の場合は「拳にリードされて身体が動く」という点にポイントがあるようです。

適切な姿勢、構を作って全身に「遊び」がないようにした状態で、ある身体操作をすると拳に全身が引っ張られるように動く。それによって体軸が移動し、全身の重みが拳に乗る、ということのようです。

強い突きをしようとすると、たいていは拳を振り上げたり、身体を大きくひねったりして反動をつけて突こうとするものです。しかし、そうではなく拳から動き出す(そのため「手打ち」のように見える)ことで強い打撃が生まれる、というのは面白いです。

また、二天一流の動きにも「刀に引っ張られて(リードされて)身体が動く」ようなものがありますので、それと共通点があるのも面白いです。

他にも、

  • 軸の意識
  • 地面を蹴らずに前に進む

などの共通点もあるため、沖縄拳法の基礎的な鍛練は私にとってはやりやすく感じました。

2-2:型の稽古

他にも、ナイハンチという一番基礎になる型の鍛練もしました。これは、沖縄拳法のエッセンスが詰まった型になっているようで、拳にリードされること、身体を締めて遊びがないようにすること、地面を蹴らずに進むこと、軸が偏らないように移動することなどが鍛練できそうです。

ナイハンチの鍛練をすることは、剣術の上達にもつながるものだと直感しました。

以前やっていた剛柔流とは大きく異なる空手ではありますが、私にとっては剣術の上達のため、もっと強くなるために良い出会いとなったように思います。

もちろん武術において身に付けるべきは攻撃力の強さだけではありません。技そのものの質やその使い方、拍子や間合いの取り方、心の強さなど鍛練すべきことは多岐にわたります。しかし、その基礎となる身体そのもの・姿勢の鍛練や、中核となる身体操作を型を通して身に付けることは非常に重要であり、その点で菊野先生の稽古会は非常に価値のある場になっています。

-武道・武術体験記

© 2023 FUKAYA TOSHIFUMI